ディスパテル
学名:Homo venenatus hort. ex
ディスパテルは惑星ビアンカに残った人類が魔力を体内より除去しようと進化した種である。
祖先は絶対暦1000~2000年頃に惑星全土に人類から分化したと考えられているが、大気中より魔力を取り込み魔術として放出する現在のディスパテルになったのは絶対暦3000年から4000年頃である。
現在のミネルヴァおよびディスパテルには生物を分類する機関が存在しないため、仮称として我々エインセルが人類の命名規約を元に命名するものとする。
概要
惑星ビアンカに住む人種のうち、唯一魔術と呼ばれるエネルギーを使うことができる種族である。
絶対歴1000~2000年頃にミネルヴァと分化したと考えられ、空気中に漂っている魔力を体内に取り込み、体内の魔術回路で自在に形を変え「魔術」としてエネルギーを放出する。
ディスパテルの多く暮らしていた地域は、当時大気中の魔力の密度が高く、呼気の他に魔力を含んだ動植物を食用とせざるを得なかったこともディスパテル誕生の背景として挙げられる。多くは魔力の中毒によって死亡したり、身体に重篤な障害が残ったが、そのうち体内に蓄積した有毒な魔力を何らかの形で効率よく排出する能力を持った個体が多く生き残った。これがディスパテルの始まりといわれている。魔力を拒絶する方向に進化したミネルヴァに対し、魔力を受け入れつつも、それを適宜体外に排出する方向に進化したのがディスパテルである。
なお、分化した時点では体内に蓄積された魔力を外に放出する術しか持たなかった。魔力の積極的な取り込み、および体内での形質の変更など現在の「魔術」を行使するディスパテルが現れ始めたのは絶対暦3000年~4000年頃であり、この時期を後に「第一次魔術革命期」と呼ばれる事となる。しかし魔術の積極的取り込みを行うようになった代償としてディスパテルは次第に身体的に脆弱になり、その寿命を自ら縮めていくことになった。
身体的特徴
ディスパテルとミネルヴァの相違点のうち、特筆すべき点は体内に持つ「魔術回路」の存在である。
大気中の魔力を吸い上げ、体内で形質を変えたものを生身や杖などから放出する。
実際に体内に回路を持つかどうかは不明であるが、魔術を使う際に行う上記の一連の手続きを便宜上「回路」と呼んでいる。
個人によって内包できる魔力の量、回路の大きさは生まれた時点で決まっており、後天的に拡張または縮小することは不可能である。しかし、杖や護符など回路を付与されたものを道具として使用することによって、ある程度の増強は可能である。
見た目でわかる身体的特長としては、ミネルヴァよりも体が弱く、寿命が短い。皮膚や髪の色も人類より薄く白に近づくなど、ミネルヴァとの区別は容易である。
特に髪の色は個人が内包する魔力の高さによって髪の色が薄くなり、より白色や銀色に近づくことが知られている。
これらは、本来有毒な魔力を体内に取り込むことによる弱い中毒症状であると考えられており、実際魔術をまったく使わない5歳児の時点までは、外見上ミネルヴァとディスパテルで大差はない。魔術を何度も使い続けることによって身体への影響が出始める。
有毒な魔力を体内に取り込むという性質から、大気中の魔力の密度が上がるにつれて体内に流入する魔力の量が増え、身体に重篤な異常をきたす。基準のおよそ1万倍ほどの濃魔力地帯では、恒常的な放出を行ったとしても、わずか20分で細胞が壊死を始め、それから3時間以内に死亡したというデータもある。
生活圏
ミネルヴァが生活することが困難な場所でも魔術で環境を整えることができるため、北半球を中心に広大な生活圏を持っており、それがそのままペルセウス王国の領土にもなっている。
ディスパテルのほぼ全員がペルセウス王国で生活し、国外に出ることはほとんどないが、絶対歴8000年頃には隣国のケフェウス大公国と友好的な関係を結び、魔術と科学を融合させた新しい分野の共同研究も開始されている。
文化
ディスパテルには体内に内包する魔力や魔術回路の容量により、上級・中級・下級と分類することが国によって義務付けられている。厳密な区分は明確でないが、初等学校入学時に行われる判別用の詠唱文をどこまで唱えることができるかで決められる。
この位分けは差別的な要素を生むとして批判する者もいるが、位が上がるほど身体的に不利になり就くことのできる職業などをはじめ様々な活動に制限がかかることも見逃すことはできないため、ある意味上級該当者のために整備された制度といえよう。
暦法は、赤い月コーデリアを基準とした36日周期のミネルヴァと異なり、青い月オフィーリアを基準とした48日周期の暦法を用いて生活している。